社員にとって快適な職場環境をつくるために、さまざまな取り組みを行なっている経営者の方は多いのではないでしょうか。快適な職場環境は、何もおしゃれな空間を取り入れたり、今どきの働き方を採用したりするだけでつくれるとは限りません。

実は温度や湿度にも気を配る必要があります。オフィス内の温度や湿度は「生産性に影響を与える」と言われているからです。今回は、オフィス内の温度や湿度が社員にどのような影響を与えるのか、オフィスで適切な温度と湿度はどれくらいなのかご紹介していきます。

オフィスの気温

オフィスの温度と湿度は生産性に影響する?

✓温度と生産性の関係

2005年にコーネル大学で温度と生産性に関する研究が行なわれました。その研究では、15分おきに室温と対象者9名の仕事の生産性を測りました。その結果、室温が20℃から25℃に上がると、タイピングミスが44%減少し、タイピング文字数が150%増加したことがわかったそうです。このことから、室温と生産性には深い関係があると言われています。

✓湿度と生産性の関係

温度と同様、湿度も生産性に影響を与えると言われています。ある研究によると、湿度が35%より低くなると、乾燥により人は不快を感じることがわかったそうです。

この研究ではほかにも、乾燥によって瞬きの回数が増え、データ収集といった視覚的な作業がともなう仕事においては生産性を下げる原因になるという結果が出ました。

一方、湿度が高すぎるのも人が不快に感じる原因になります。具体的には湿度が70%を超えると人は疲れを感じやすくなるようです。

以上のことから、社員が過ごしやすいオフィス環境をつくるうえで、温度と湿度は見過ごせない要素になると言えます。

オフィスで適切な温度と湿度

では、社員が快適に過ごせて、生産性に影響を与えない温度と湿度はどれくらいなのでしょうか。

✓適切な温度と湿度

オフィスで適切な温度・湿度については、さまざまな結果があります。

ロンドン大学の研究では室温22℃~24℃の環境だと生産性が向上すると示されました。一方、ローレンス・バークレー国立研究所とヘルシンキ工科大学の共同研究では、室温22℃が適切な温度だという結果となりました。

このように研究によって結論が異なるのは、職種や作業別で最適な温度が異なるからだと考えられています。たとえば、「創造性を必要とするクリエイティビティな職種・作業では温かいほうが良い」、「会計や総務といったバックオフィス系の職種・作業では22℃が適切な温度になる」といった研究もあります。

快適に過ごせる環境を構築する際は、以上のように職種や作業によって適切な室温が変動する可能性があることを知っておく必要があると言えます。

また、気をつけておきたいのが「温度と湿度については規定がある」ということです。日本では空調設備を設けている建築物または事務所で努めなければならない温度と湿度を規定しています。それによると、室温については「17℃以上28℃以下」、湿度については「40%以上70%以下」をキープすることを定めています。

参考:事務所衛生基準規則5条3項

さらに、職場快適基準では「夏は24℃~27℃」、「冬は20℃~30℃」、「湿度は50%~60%」を維持することが推奨されています。オフィスで適切な温度と湿度を考える際は、これらの基準を踏まえて検討してみてください。

まとめ

今回はオフィス内における適切な温度と湿度のことについてご紹介してきました。オフィス環境の改善は、レイアウト変更や働き方改革だけでは難しいかもしれません。ここでお話ししてきたように温度や湿度にも気を配り、快適かつ生産性の高いオフィス環境を目指していきましょう。